とある数学徒のひとりごと

ゆるく, しかし粘り強い思考を求めて

卒業式と試験

先日、無事に大学を卒業しました。

正直なところ卒業式の前日(というか、学位記授与式直前)まで、卒業式にはいきたくなくてたまりませんでした。

小・中・高と卒業式は経験してきてはいますが、あの独特の雰囲気というか、お別れが辛いよぉというのを共有する人がいないのに、ただ一人、あの狭い教室にいるというのがとてもつらかった思い出があります。それだけ友人たちとの時間を大切にしていなかったということですが...

すぐに帰ってしまい、自宅で親から怒られるということを3回やってしまっているわけです。そりゃ、大学の時なんて、もっと居場所がないだろと思っていました。

でも、今回はなんだか違いました。というのも、やはり、大学ですから、過去問などを解いてあげていると、人が集まってきやすく、その中で特に仲が良くなったりすることもあるので不思議と、学位記授与式が終わった後も話す人がたくさんいてとても楽しかったです。

特に仲が良かった3人のうちの1人に、とても尊敬している友人がいたのですが、彼の様にはなれない気がしましたね。

彼にはよく数学を教えたり、課題をやってあげたりしていたのですが、それが嫌にならないくらいに、彼はいろいろと仕事を頑張っていたのです。

嫌だけど何とかして乗り切るためにいかに効率よくするか、そして楽しむかというのに関しては長けていたんだなぁと思います。

僕はといえば、効率よくなんてことは考えてもできなく、そもそも予定を立てることができない人間です。

ただ、がむしゃらにやっては失敗し、みんなの2倍の時間をかけて、やっとみんなの半分くらいというのが常です。

そういう自分にとっては、彼のような存在はとても憧れで、"普通の"生活ができる優れた人間なんだと思います。

あまり、人並みのことを話せない僕に対してでも気さくに接してくれて、面白いことを教えてくれる。数学をやっていてはわからないことばかりで、あのようなことができるなら、研究するのもばかばかしいなと思います。

まあ、僕の場合は他のことがうまくいかないので相対的に数学をやっている方が楽しいのでやっているのですが...(得意だからやっているというわけではない)

卒業式が嫌だった原因はもう一つ、単純に苦手な人が話してこないかが心配だったのもあります。

何が苦手かというと、その人は賢いのですが、それゆえに馬鹿にしてきたり、嫌がらせをしてきたりしたんですよね。(たしかB1のころ)

大学院も僕が行きたかった大学(キャンパスは違うけれど、確か本郷)に行くし、その人のやる数学は実用的で将来明るいぞエッヘンって感じだし、すべてが鼻につきます。

その人的には純粋数学では太刀打ちできないから応用の方に行ったのだと言っているのですが、楽しいのは純粋数学の方だろぉぉと思っちゃいます。まあ、面白いで食べていけたら困らないのですがね。

しかし、その人は、学位記授与式で僕の前の席に座るや否やなんだか居心地が悪そうな顔をしていました。(僕が上述の尊敬する彼と楽しく話していたからかもしれませんが)そのひとから、「結局、お前のやってる数学が良くわからないのだが」ということを真剣な顔で言われてしまい、挙句の果てに、「その分野は代数・幾何・解析のどれなんだ?」などということを聞かれました。

3つとも全部使うし、全部やらなきゃ始まらないよというと、納得していない顔でしたが、数学ってそんなものですよね?(指導教員の方からは、何でもやってやるというくらいじゃないと話にならないと言われ続けていたのが懐かしい。)

その人は、テストがとても得意です。正確には、少ない知識でたくさんのことができます。

僕は、反対に何冊本を読んでも物にならないというか、計算が良く進むくらいで理論の形成には至りません。

そして、僕は受験に失敗し続けています。

何度も何度もやって、忘れては入れてを繰り返しても、新しい問題は何も見ないと手が出ない。

数学を日々やっているのにおかしいのですが、僕は考えることができなくなったんじゃぁないだろうか?反射的に問題を解くことをやりすぎたんじゃないか?

1つの問題を考えるとなると、それはもう時間単位ではなく日単位です。(ものに依れば週単位、いまのところ)秒で解く又は、ずーっと考えるのどちらか、僕らしいですね。

中間というか、コツというものを持ちえない。

はたして、試験のコツとは何でしょうか?

あの人はテストが得意です。だから院試は通りました、僕は落ちました。

だけど、大学の成績はあの人より僕の方が上でした。

こういうことばかりな気がします。対外的な評価というものを得るために試験の勉強をするのに、内部での評価しか得られず、結局、勝負には負けてしまうのです。

思えば、だれかと争うということをほとんどしていない。いつも率先して負けていたような気がします。

コツはあるはずなのです、見つけられていないだけで。

でも、無理に見つけようとするのもよくないのかなぁ。そういうことをする用のシステムに脳がなってないのかも。

苦手なあの人は僕を敵のように見て、尊敬する彼は、僕に仕事を与えてくれた。

あの二人はどちらも優秀で仕事ができるんだと思う、だけどここまで正反対なのも不思議だ。

旅立ちの先にはどちらの人間が待っているのだろうか...

はじめて話した時の彼の声を思い出しながら、一見無機質な数式に今日も立ち向かっていく。