とある数学徒のひとりごと

ゆるく, しかし粘り強い思考を求めて

思い出の数学書(学部3年のとき)

さて、3年生になると本格的に大学数学の勉強が始まります。しかし、コロナの影響もあって、すべての講義がオンラインもしくはビデオ視聴での課題提出という形でした。テストがないから僕たちの世代はかなり楽な世代だったと思います。(そのせいか、大学院受験に落ちたのかも・・・)比較的、自由に数学を勉強していたような気がします。まず、熱心に読んだのが増田久弥さんの『関数解析』でした。

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増田久弥『関数解析

当時の関数解析の講義の指定教科書でした。その時の教授の講義が好きで、いっちょ教科書も読み込むかぁとなって買ったのを思い出しました。その講義のノートは今でもちゃんと持っており、大学の講義で大切にとっておこうと思っているノートの3つのうちの1つです。(残り2つは多変数解析と表現論の講義ノート)このノートだけまだTexにしていないので書き終わったらアップロードするのも手かなぁと思ったりします。

なぜ、Tex化していないのかというと、この講義、そしてこの教科書の扱っている内容はかなり少なく、正直なところまったくもって足りない感じなのです。(スペクトル分解や、コンパクト作用素のこととかもっと欲しい感じがしました。)したがって、自分で関数解析の勉強をしていたところTexにする時間が無くなったということです。しかし、初めの1冊にはもってこいでしょうし、この本であんまりおもしろくないなと感じたら関数解析は肌に合わないのかもしれません。

色々書きこんだりして勉強してたなぁと懐かしく思います。

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関数解析』への書き込み

パッとすぐに分かればいいんですけれど、なかなかうまくいかないのが数学の勉強です。まあ、ちまちまと勉強するのは楽しいから個人的には余り苦にはならなかったのですが。(研究となるとそうとはいきません・・・)

3年の後期にはテキストを読んで発表するという演習科目があったので、僕はこの関数解析の講義を担当していた教授のところを選んで発表したりしていました。興趣が忙しいのか、15回中7回くらいしか演習の講義がなかったのは伝説的でした。

そんな中で、その時の演習で同じクラスだった人たちが偏微分方程式に興味がある人ばかりでしたので、自分もその流れに乗ってナヴィエ・ストークスの方程式の勉強をしたいなと数人の教授に相談などをしていると、とある教授が1冊の本をくださりました。それが、垣田髙夫さんと柴田良弘さんが書いた『ベクトル解析から流体へ』です。

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垣田・柴田『ベクトル解析から流体へ』

この本は、もう僕にとってのバイブル的な存在です。(だが偏微分方程式の方に進んでいない。)絶版なのがとても残念でたまりません。この本は、見た感じ、試供品的な奴を譲ってくれたのかなという感じですね。とてもありがたいです。ゴリゴリした計算がしっかりと書かれており、行間の測度が0なんです。とても読みやすくて、勉強したぞ!という達成感が味わえる1冊です。しかし、測度論がなんだか不思議で興味を持ってしまい、結局は偏微分方程式ではなく、あまり実用的でない数学の方に進むことになりましたが。しかし、読んでいて楽しかった本です。多重指数の扱いになれていなかったり、そもそもの数式の洪水におぼれていたような感じもします。

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『ベクトル解析から流体へ』のメモ

なんかこのメモ、合ってるんですかね。昔のことだから捨てずに思い出として残していますが。ヘルダーの不等式やミンコフスキーの不等式評価を、多変数の場合で暗算でパッとできないところからも実力の無さがうかがえますね。

どうして、偏微分方程式の方に進まなくなったのかといいますと、3年後期にあった表現論の講義の影響なんですよね。というか、この講義がなかったら、僕は今頃、測度空間への群作用を考えようなどと思わずに、偏微分方程式をいじって遊んでいたと思います。

表現論に触れて、なんとなくですが、ぞくぞくしたんです。単位が取れるかの不安ではありませんよ(笑)。とあるベクトル空間上の自己準同型に写すことで、群の性格を見ていこうとするのが、一人の女性を様々な角度から見ていって、魅力を感じていくような感覚でした。3年の講義では指標の計算と、クライン・デュバル特異点の話をしていましたが、指標の方はともかく、クライン・デュバル特異点の方はそんなにわからなかった記憶があります。やはり、代数幾何方面はあまり向いてないのかも。

そして、その講義が終わった後に、教授に表現論の勉強はどうしたらよいかとメールしたところ、Brian Hallさんの『Lie groups lie algebras and representation theory』を薦められて、今度はリー群が気になるぞと思い、大学生協の本屋をぶらついていると見つけたのが、示野信一さんの『演習形式で学ぶリー群・リー環』でした。

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示野信一『演習形式で学ぶリー群・リー環

多様体の扱いが不慣れだったなぁと強く実感しました。それにしてもexpはとても便利です。連結リー群ならexpで書くことができるし、リー環も線形リー群ならとても分かりやすい。のちに、とある講義録を読む際に、線形リー群ではなく、一般に多様体としてのリー群でやろうと縛りを入れるとかなりきつくなってしまった経験があります。(その時は、杉浦さんの『リー群論』という本に助けられました。あの本も絶版なのは悲しい・・・)リー群は、今でも主要な武器の1つです。というか、院生は皆、リー群を知っていることが仮定されています。暗黙の了解でしょうかね。そう言ってしまうと、院生への暗黙の了解が大量になってしまい、もはやすでに教授レベルやんけ!と言いたくなってしまいそうです。

こんな感じで3年生の時はガッツリ解析的なことから表現論チックな方面へ歩み始めました。結局、3年後期の演習とは違う教授の下で4年のゼミは行うことにしたのですが。4年の時は、2つの研究室を掛け持ちみたいなことをしていて、後期は1週間で4回ゼミをやったりしていました。でも、あれ位はこなさないといけないんだろうなぁ。キャパシティは広げてやらないとかわいそうだろ?という『あおざくら』という漫画でのワンシーンを思い出しましたね。(僕のキャパは広いのか???)

さて、次回は、大学学部時代最後の年です。この時はゼミと院試でかなりアップアップな状態でしたね。院試は残念な結果でしたし。結局、数学の勉強ができていなかったという証明にもなります。進学予定の大学院の教授からは、君はまだ抽象的な数学をするときではないといわれましたし。じゃあどうするんだよっていう感じですが。

ともあれ、次回もいろいろと書きたいと思います。

ではでは